蛇行と蛇行防止方法 | 技術情報
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蛇行と蛇行防止方法

1.ベルトの蛇行・片寄りの定義

一般的にベルトがプーリ上で安定しない状態を蛇行と呼びますが、詳細を見ていくと下記のような現象に分けられます。

名称 現象 原因
蛇行 ベルトが幅方向に振れる
  • 材料のキャンバー(真直性)
  • 溶接部分の真直度が出ていない
  • 装置とプーリの平行が出ていない(図.1)
ベルトが装置に対して斜めに走行する
  • 装置とプーリの平行が出ていない(図.1、2、3)
片寄り ベルトが装置から脱落する
  • 蛇行原因の1つまたは複数によりベルトがプーリ上を走行しない
  • ワーク重心とベルト幅の中心がずれているためにワークの有無によってベルトの重心が変わる

2.ベルトの蛇行・片寄りの実態

平ベルトを使用する上で最も問題になるもののひとつが蛇行・片寄りです。
ベルトは基本的に張力の弱い方向に寄っていきます。ベルトに均一に張力がかけられた時ベルトは安定的に走行する事になります。
ただし、スチールベルトの材料はその他のベルトに比べ板厚の均一性やキャンバーに優れていますが、極微小な厚みの不均一、キャンバーなどの蛇行・片寄りの要因があります。
装置上にはプーリの加工精度、フレームの真直度、組み立て精度等の蛇行・片寄りの要因があります。
そして最も厄介なものが外的要因です。これは、ワークの有無や均一に荷重がかからない事による荷重の変動、気温の変化や温度分布の不均一によるフレームの変形などです。

3.ベルトの蛇行・片寄り対策

ベルトの蛇行・片寄りの実態よりベルトを安定させる対策が必要になります。
ベルトが蛇行・片寄りしにくい状態にするための方式が必要になります。
プーリの中央部分の径を大きくして両端に行くに従って径が小さくなる様な形状にした標準タイプ(クラウン)、ベルト裏面にV型のゴムを接着してV型の溝の中から脱落しないようにするVロープタイプ、プーリなどにフランジを付けることで片寄りを強制するフランジタイプがあります。
特徴は表.1を参照下さい。

タイプ 標準 Vロープ フランジ
メリット 加工が容易で安価。
ベルト交換作業が容易。
調整の手間が少なくなる。(ベルトの張力は弱い状態でしか使用出来ません。) フランジの中にベルトが固定されるため、脱落が防止できます。
デメリット 各要因のバランスで安定しているので、バランスが崩れると蛇行・片寄りする可能性あり。 Vロープ加工費用としてのランニングコストが必要。
ゴムの発塵あり。
フランジとベルトの擦れによりベルトの寿命が短くなる可能性が高いです。
備考 装置毎に設計が必要になりますので、都度お問い合わせをお願いいたします。 下記の4.Vロープ寸法を御参照下さい。 ベルト板厚、フランジ材質、フランジ形状・角度などの要素がありお問い合わせをお願いいたします。

表1

次にベルトの左右の張力を調整する機構が必要になります。
従動プーリまたは、角度調節可能なプーリの軸の左右を押したり引いたりする事で張力を調整します。その方法として、ボルト、おもり、エアシリンダ、電動シリンダなどです。特徴は表.2を参照してください。

機構 ボルト おもり エアシリンダ 電動シリンダ
メリット 安価で機構的にも簡単な構造にできる 外的要因にもベルト張力の均一性と言う部分では良好。機構的にも簡単 センサによりエッジを検出するので、確実に片寄りを防止できる センサによりエッジを検出するので、確実に片寄りを防止できる。
デメリット 外的要因により片寄りする可能性があるので注意が必要 おもりをつるすスペースの問題が有る エアの供給が必要になる
エア配管、センサの配線などが必要になる
電気配線が必要になる
高価になる
備考 ほとんどこの機構である ほとんど使用されていない 高価なため、必要に応じて検討が必要になる 高価なため、必要に応じて検討が必要になる

表2

上記以外の蛇行調整法として、自動制御でYBPシステムがあります。
このシステムは上記の方式と機構とは一線を画した商品になり、スチールベルトの交換、調整、メンテナンスを画期的に改善できる可能性が高いシステムですが、実機での導入実績が少ないため、もうしばらくフィールドテストが必要である商品です。

4.Vロープ寸法

最小プーリ径
7 5 3 11 7 (5.4) 43.6° φ50
10 6 6 14 8 (8.7) 36.9° φ100
17 11 9.5 21 13 (12.1) 37.6° φ150

表3

Vロープ形状